恋蛍~クリアブルーの風に吹かれて~

美波ちゃんと話していると、自分の心がいかに濁っていたのか痛感した。


真っ新で純粋無垢な美波ちゃんがうらやましくて。


あたしは苦笑いした。


「帰ろう。美波ちゃん」


立ち上がって手を差し伸べても、美波ちゃんは納得のいかない様子で動こうとしない。


「……良い考えだと思ったのにさ」


ぶつぶつ、小言を漏らして頬を膨らませている。


「分かった」


あたしはしゃがみ込んで、美波ちゃんと目を合わせた。


「じゃあ、約束」


「約束って?」


「海斗と結婚はできないけど。あたし、ずっとこの島に居る。東京に帰ったりしないよ」


どちらにせよ、東京に戻ったところで、あたしの居場所はないと思う。


とうに無くなってしまったんじゃないかと思う。


「本当かね」


「うん。東京には戻らない」


もう、マンションは引き払ったし。


大我はひかりを選んだ。


あの賑やかな都会にはもう、あたしの居場所なんてないんだ。


「この島で、美波ちゃんと海斗と一緒に居たい。おばあと言い合うのも、意外と楽しいし。あたし、この島に居たい」


それに、嬉しかったから。


この島に居て欲しいと言ってもらえた事が、本当に嬉しかったから。


まるで、必要とされているみたいで。


誰かから必要とされているような気がして、たまらなく嬉しかった。


嬉しくて、だから、あたしは思いあがっていたのかもしれない。


「帰ろう。お腹すいちゃった」


あたしが微笑むと、


「いー!」


美波ちゃんはほんの一瞬泣き顔になったあと、カンカン照りのおひさまのように、キラキラの笑顔になった。


そして、あたしたちはどちらからともなく手を繋いで、夜の道を再び歩き出した。