恋蛍~クリアブルーの風に吹かれて~

東京に居た頃は、みんなと同じように行動して、人の流れに乗っていればはじき出される心配もなかったから。


ただ、ぼんやり流されて生きて来た気がする。


メリットもあったし、デメリットもあったけど、気楽といえば気楽で。


だけど、妙に疲れて。


でも、この島は違う。


人は少ないし、物だって何でも揃っているわけじゃなくて。


夢中になんなきゃいけなくて。


そうでもしないと、1日が勿体無いような気がして。


ううん、違う。


気付いたら、何かに夢中になって必死になっている自分が居て。


「ねぇねぇ」


夜空を横切って行く飛行機の点滅する光を目で追いかけていると、美波ちゃんにTシャツの裾を引っ張られてふと我に返った。


「どうしたの?」


「今、何考えてたの? 東京のことかね?」


「あ……うん。あたしも、あれに乗って沖縄に来たんだよね。まだ来て間もないんだけど、なんだか懐かしくて」


「東京って、どんなところかね」


「何、美波ちゃん、東京に行ってみたいの?」


いつか一緒に遊びに行こうか、と誘ってみると、美波ちゃんはふるふると首を振って「行きたくないさ」とあたしのTシャツを掴んだままうつむいた。


「あのさ、ねぇねぇ」


「うん?」


一拍あって、美波ちゃんが弾かれたように顔を上げた。


「東京に帰らんでね」


「……え?」


「東京に戻ったりしないでね。ずっと島におってね。お願いさ、ねぇねぇ」


大粒の瞳が真っ直ぐ、何かを訴えるようにくるくる輝く。


その瞳の引力は息を飲むほど強いものだった。