恋蛍~クリアブルーの風に吹かれて~

海斗はどこに行ったのか聞いても、美波ちゃんは教えてくれなかった。


「夜までには戻って来るさ。にぃにぃとの約束やっさ」


その一点張りで、結局教えてもらうことができなかった。







「すっかり遅くなっちゃったね」


通りかかった石垣の奥で、真っ赤なハイビスカスが緩やかに吹いた風に揺れている。


「しょうがないさ。てぃーらあみが降りよったからさ」


帰り道、突然、夕立に降られ、近くにあった大きな木の下で雨宿りをしていたら、すっかり日が暮れてしまった。


「てぃーらあみは珍しいことじゃないさ。突然降ってきよるし、すぐにやみよる」


「スコールみたいだね」


「すこーるぅ? 何か、それ」


「さっきみたいな雨のこと」


「東京ではてぃーらあみのこと、すこーるって言うのかね」


美波ちゃんが言うてぃーらあみとは天気雨の事で、島では日常茶飯事らしい。


島の天気はころころ変わりやすい。


中途半端に降ってあがった天気雨。


日中はカンカン照りだったから、熱い地面が雨を吸ってまるで島がまるごと蒸し焼きにされたようで、息苦しいほどむしむしする。


もうすっかり日没したというのに、あたりは窒息するような蒸し暑さに包まれている。


正面には丸く太ったおぼろ月が浮かんでいる。


集落の近くまで来た頃にはそのおぼろ月もすっかり色濃くなり、煌々と光を放ち、辺りを照らし始めていた。


夕立を吸い込んでもうすっかり乾ききった白砂地の道に、あたしと美波ちゃんの影が伸びている。


雨上がりの空はミッドナイトブルー色に晴れ渡り、明るい月光と無数の星たちがぜめぎあっている。


「あつ……」


今夜はきっと、熱帯夜だ。


美波ちゃんと繋いでいる手とは逆の手で額に滲む汗をぬぐった。


汗の理由は雨上がりの蒸し暑さだけじゃなかった。


右足首の違和感に、頬が引き攣る。


痛い。