恋蛍~クリアブルーの風に吹かれて~

『お前の本当のにぃにぃじゃないんだぜ』


「だから、海斗は居なくなったりしないよ」


『だから、海斗はいつか居なくなるに決まっとる!』


「だって、美波ちゃんのにぃにぃなんだから!」


『知らんのか? 美波。海斗はこの島の子じゃないんだぜ』













少しずつ体をずらし、ようやく梯子に足を掛けた時にはもう、太陽が若干西に傾き始めていた。


「そん調子さ! あと少し!」


「ちばりよー!」


あんなに遠くに見えていた双子の顔がもうすぐ近くに見えた。


木を取り囲む小学生たちも「美波ちゃん、ちばりよー!」と声を上げている。


あたしは一段一段ステップを確かめながら、慎重に慎重に、そして、地面に下りた。


「……は、はあーっ」


あたしは美波ちゃんをおんぶしたまま、地べたにへなへなと座り込んだ。


手も足も疲れ切って棒になっていた。


立てそうもない。


「やったあー!」


わあっと飛び上がる小学生たちに囲まれ、ようやく恐怖から解放されたのか、美波ちゃんが泣き崩れた。


あたしは残っていた分の力を使って、その擦り傷だらけの小さな体を抱きしめた。


「海斗は、美波ちゃんのにぃにぃだよ」


「……そうさ、そうだよね、美波の……にぃにぃさーっ……」


そうだよ。


海斗は、美波ちゃんの。


「はーっさ! こりゃあ、たいしたちゅらさんが引っ越して来よったー!」


「でーじ、でーじ、でーじ! でぇーじちゅらさんだに!」


双子があたしと美波ちゃんの回りをわいのわいのと駆けまわる。


「うるさいっ!」


でも、あたしは一緒に笑う事ができなかった。


暑い西日を背中で受け止めながら、あたしは必死に美波ちゃんを抱きしめていた。