恋蛍~クリアブルーの風に吹かれて~

頬を冷や汗がつるりと伝い落ちる。


右手で太い枝を掴んで、なんとか体勢を整えた。


あとはこの木から、双子が伸ばして支えてくれている梯子に足を掛ける事ができれば……。


後ろ向きに下りる体勢をとり、そっと下を見下ろしてぞっとした。


もし、滑り落ちでもしたら……。


あたしの恐怖心が背中から美波ちゃんに伝染してしまったのだろうか。


あたしにしがみつく美波ちゃんの力が一気に強くなった。


「どうかね! 来れるかね!」


「ちばりよー! あともう少しさー!」


真下で梯子を支えている双子が遥か遠くに見える。


怖い。


あたしはぎゅっと目をつむって、頭をふるふる振った。


怖い。


ゆっくり、目を開ける。


でも、やるしかない。


真下で小学生たちが固唾を飲んでいるのが見える。


「美波ちゃん、お願い。あたしのこと信じてね」


うん、と振り絞るような返事が耳にかかる。


近くの枝に掴まり、あたしは空を見上げて深呼吸した。


「信じてね」


海斗のこと。


大好きなにぃにぃのこと。


手探りするように少しずつ、体を後ろにずらす。


美波ちゃんがしがみついてくる。


その小さな腕の感触に、何かが込み上げてきてたまらなくなった。


こんなに海斗のことが大好きなのに、あんな事を言われた美波ちゃんは、どんな気持ちだっただろう。


透くんの言葉に、この純粋な心が切り裂かれてしまったのかと思うと、たまらなかった。


『美波よぅ、お前、知らんのか?』


「気にすることないよ、美波ちゃん」


足をゆっくりゆっくり、後ろへずらして行きながら、あたしは美波ちゃんに話しかけ続けた。


『海斗はさ、お前のにぃにぃはさぁ』


「海斗は、美波ちゃんのにぃにぃだよ」


あたしの首元に巻きつく美波ちゃんの腕が震えていた。