恋蛍~クリアブルーの風に吹かれて~

「だからね、誰に何を言われても、気にしないで。透くんなんて、相手にしなきゃいいのよ」


「ねぇねぇ……?」


何で、そのこと知ってるの?


とでも聞きたそうに、キョトンとした美波ちゃんの片目から、ひと粒の涙が伝い落ちた。


「他の人間のいうことなんて、信じなくていいの。美波ちゃんは、海斗のことを信じていれば、それでいいのよ」


こんなこと、小学3年生の美波ちゃんに言っても、分からないのかもしれないけど。


色恋沙汰なんて知らない今はまだ、理解できないのかもしれないけれど。


「あたしね、捨てられちゃった人間なの。東京でね。大好きな人に、捨てられちゃったんだ」


向こうに見える神々しく輝く水面を見つめながら、あたしは続けた。


「だからね、分かるの。一度捨てられた人間だから、なんとなく分かる気がする」


美波ちゃんは何も言わず、ただぽかんと口を開けて聞いていた。


「簡単に人間を捨てる人間と、絶対に捨てたりしない人間。あたし、分かる気がする」


今だから、分かる気がする。


口をまんまるに開けている美波ちゃんに、あたしは微笑みかけた。


「海斗は、人間を捨てたりしない。たぶん、絶対。だから、美波ちゃんが不安になることないよ」


あたしの言ってること、分かる?


訪ねると、美波ちゃんは静かに頷いた。


「誰に何を言われても、海斗のこと、信じてね」


だって、きっと、海斗は人を裏切ったり捨てたりしない。


双子が言っていた事が、もし、本当なら。


あの時、玄関先であたしが聞いた話が、もし現実だとするなら。


海斗は絶対、そんなことはしない。


その痛みを、海斗は分かっているはずだから。


きっと、美波ちゃんも、そのことに薄々気付いてしまったから、こんな無茶をしてしまったに違いない。