恋蛍~クリアブルーの風に吹かれて~

しゃくりあげて泣く美波ちゃんの涙を拭いながら、あたしは笑った。


「びっくりしちゃった。よく、こんなとこまで登ったね」


涙を拭うあたしの手を捉えて、美波ちゃんはボロボロ涙を流した。


「美波さ、悔しくってさ」


美波ちゃんはぎゅっと歯を食いしばった。


「悔しいよ! 美波、悔しくてたまらんの!」


「……うん」


ぽろぽろ、ぽろぽろ、美波ちゃんの目からこぼれる涙が、幹に落ちて細々と弾ける。


「にぃにぃは……居なくなったりしないさ」


「え?」


「だって……美波の、にぃにぃだもん」


しゃくりあげながら、美波ちゃんは声を絞り出すように言った。


「にぃにぃは、美波を、捨てたりしないさ!」


あたしにしがみついて、


「にぃにぃっ……にぃにぃ……」


まるで嗚咽を漏らすように泣く美波ちゃんを、真っ直ぐ見ていることができなかった。


あたしはゆっくり顔を上げて、右肩に触れる枝葉を右手で押し上げた。


すごい。


「ねえ、美波ちゃん」


枝葉の隙間から射し込む日差しは、下から見上げた時よりも数段眩しい。


たっぷりの木漏れ日が、あたしと美波ちゃんを包み込んでいた。


空が近くにある。


手を伸ばせば触れられそうなのに。


あんなに近くに空が見えるのに、触れることができないのはどうしてなんだろう。


ずっと向こうに、海が見えた。


午後のきつい日差しを受けて細かく輝く青い水面は、まるでダイヤモンドダストのようだった。


「この島、すごく綺麗なところなんだね」


地上で見上げる景色も綺麗だけど、木の上から見下ろす島の景色は格別だった。


「あたし、この島が好きなのかもしれない」


与那星島へ来て、初めて思った。