恋蛍~クリアブルーの風に吹かれて~

「いい? 平太はあたしの右足」

と右の彼を指差し、


「章太はあたしの左足」


左の彼、と順番に指差すと、


「違うってー! おれは、平太」


「おれが、章太!」


とふたりは必死の形相で訴える。


「……もう! 同じ顔で怒らないで」


とにかく、とあたしは巨木に抱きついた。


「一気に、あたしの足を押し上げて」


でもさあ、とか、無理に決まってるさ、だとか。


もっぱら引け腰のふたりに、あたしは大きな声を出した。


「いいから! 早く!」


「「困ったちゅらさんや」」


ふたりは同時にあたしの片足を掴んで、


「「いくよ! せーのっ」」


と本当に一気に持ち上げた。


デイゴの木を取り囲む小学生たちが「わあっ」と声を上げた。


あたしは双子の力を借りてがむしゃらになって、木にしがみついた。


つるつるした幹に、手が滑る。


あと少し、もう少しなのに。


伸ばした右手の先に、枝分かれした太い木がある。


あれに掴まることさえ叶えば、きっと、登ることができるのに。


あと、少しなのに。


やっぱり……無理か……と諦めかけた時、ぐんと体が上に押し上げられた。


「行っけえー! 諦めるなあーっ!」


「おーりゃああーっ!」


平太、と、章太。


どっちがどっちなのか区別なんてつかないけど。


ふたりは最期の力を振り絞るように、あたしの足を一気に押し上げた。


その勢いにのって、ありったけ腕を伸ばす。


あたしは獲物を捉える獣のように、木の枝に飛びついた。


やった!


ふたりの手が足から離れた。


木の枝にぶら下がりながら、慎重に足を掛けて幹を登る。


そして、木の枝に膝を落として、ほうっと息を漏らした。