恋蛍~クリアブルーの風に吹かれて~

木に這い蹲ってしがみついたまま、そろそろと顔だけを動かした美波ちゃんが、


「……ねぇねぇっ」


あたしを見た途端に、せきを切ったように大声を上げて泣き出した。


その泣き声は枝葉の隙間から青空に突き抜けて行った。


傷だらけの、細い足。


悲鳴のような泣き声を聞いて、あたしの体は勝手に動いていた。


ビーチサンダルを乱暴に脱ぎ捨て、幹に飛びつく。


ひんやりと冷たい幹は、拒否するようにするするとあたしの体を滑らせた。


「……うわっ!」


どしり、と根元に尻餅をついた時、やっと双子が到着した。


「無理さ! ぜーったいに無理さ! 登れるもんかね! そんなひょろっこい体でよ」


そう言ってデイゴの木を見上げた汗だくの彼の腕を掴んで、


「うるさいわね! やってみなきゃ分からないじゃない!」


情けないわね! と睨みつけると、彼はうっと言葉を詰まらせた。


「きみ、平太くんだっけ?」


イチかバチかで聞くと、彼はムッとして首を振った。


「違うー! おれは章太の方さ! 平太は、こっち!」


今度はあたしがうっと言葉を詰まらせた。


もう、どっちがどっちなのか、区別がつかない。


「……もうっ!」


まぎらわしいったらない。


「どっちでもいいのよ! ふたりとも!」


「「えっ!」」


ふたりの腕に同時に掴みかかると、ふたりは同じ顔でぎょっとした。


「協力して! あたしに協力しなさい!」


あたしはショートパンツにTシャツの裾をグイグイ押し込んだ。


そして、袖をまくり上げてノースリーブにした。


双子を交互に睨み付ける。