恋蛍~クリアブルーの風に吹かれて~

空の青さも、海の透明度も。


浜のガジュマルの木の伝説も。


人を惹き付けて吸い込もうとする、海斗の瞳も。


やたらと海斗に執着して、あたしにつっけんどんな葵ちゃんも。


ユタという不思議な力を持つ、裏のおばあも。


一年中赤い花をほころばせる、ハイビスカスも。


いつも優しくて、気付けば一緒に居て、いつも明るいのに。


ふとした瞬間に寂しい目をする海斗が、一番。


一体、何が本当で、どれが嘘なのよ。


陽射しが照り返る白地の一本道を、あたしは汗だくで走っていた。


ビーチサンダルがこんなに走りにくかったなんて。


気持ちばかりが焦る。


「おおーい! 待ちなっさー」


ひた走るあたしの数メートル後ろで、双子が叫んでいた。


待ってられるか、と心の中で返事をして、あたしは走る速度を上げた。


「かあーっ! 都会の女は、足が速いーっ!」


「たいしたさんさなーだよねー!」


こう見えても、中学時代は陸上部だった。


一度だって、正選手に選ばれた試しはないけど、陸上部だった。


あたしは灼熱の地を夢中になって駆け抜けた。


「「待ちなっさー!」」


ぐんぐん、双子を引き離しながら。


目的地の空き地へ着くと、大きな一本の巨木を取り囲むように小さな人だかりができていた。


平らな空き地に、どっしりと居座る巨木に、あたしは圧倒された。


「これが……」


デイゴの木。


そのどっしりとした威圧感は、まるで化け物のようで異様だった。


根元からふたつに別れた巨木。


豪邸の屋根のように広がる、枝と葉。


額から、つるりと大粒の汗が滑り落ちた。


立ち尽くすあたしを見て、小学生たちがこぞって話し出す。