恋蛍~クリアブルーの風に吹かれて~

透くんは、美波ちゃんをあざ笑うかのように続けたらしい。


『じゃあ、なんで今日は一緒じゃないのさ。海斗はどこに行ったんよ』


『透には関係ないさ!』


『美波に嫌気がさして、ついに家を出たんじゃないかねー! あの、ちゅらさんと一緒にさ』


『違うーう! ねぇねぇは関係ない! ねぇねぇのこと悪く言うな!』


『じゃあ、海斗がどこに行ったのか言ってみれ!』


『それは秘密さ! にぃにぃとの約束や!』


そう言って、美波ちゃんは足元の小石を拾って、木の上で笑う透くんに投げつけた。


案の定、彼は怒り出し、興奮する美波ちゃんをわざと煽ったのだ。


『海斗がおらんと、そん事しかできんのかね! 悔しかったら、ここまで来てみなっさー!』


木登りなんてしたことのない美波ちゃんなのに、必死に歯を食いしばり、木に登り始めたらしい。


何度も落ちて、何度も転びながら、諦めずに。


そして、下りられなくなったらしいのだ。


右の男の子が悔しそうに言った。


「透はすぐに降りて、逃げて帰ってしまったのさ」


左の男の子がわしゃわしゃと頭を引っ掻き回す。


「ああっ! 透は、いーつもそうさ! 弱いものいじめばかりするよ」


どいつも、こいつも。


なんだって、こんな世の中なんだろう。


この世の中にはそういうたぐいの人間が存在しているんだろう。


みんな、海斗みたいな人間なら、もっと穏やかに時間が流れるだろうに。


海斗……。


その海斗は一体、どこに行ったっていうのだろう。


木の上で怯えて泣いている美波ちゃんの姿を想像した。


怒りなのか何なのか分からないぐつぐつ煮えたぎる感情が、胸を突き上げた。


そっくりな……いや、同じ顔のふたりをあたしは睨んだ。