恋蛍~クリアブルーの風に吹かれて~

そして、どちらか一方が、ではなく、またしても同時に言った。


「「美波が、木から下りれなくなったあ!」」


誰か、大人は居ないんかね、と右の方の男の子がジタバタと足踏みを始めた。


「何、どういうこと? 海斗は? 一緒じゃないの?」


左の男の子が答えた。


「おらん! もしかして、ちゅらさんと一緒じゃないかと思って来てみたんだけどね」


すかさず、右の男の子が続けた。


「集落にはおらんかった! 大人もみいんな仕事に行ってるしよ! おばあとおじいしかおらん!」


「ちょっと待って。話が見えない」


どうやら、双子の話を聞いたところによると、いきさつはこうだった。


集落の小学生数人が、近所の空き地で遊んでいるところに、双子が通りかかったらしい。


「いつもなら、美波がおるところには必ず海斗もおるんだけどな」


「今日は美波だけやったからさあ。めずらしいなと思って」


ふたりが通過しようとした時、小学生たちの中でも一番やんちゃな男の子が、デイゴの木に登り始めた。


友寄 透(ともよせ とおる)くんという、5年生だと双子は教えてくれた。


「透が木の上から、美波を挑発しとった」


「そうさ」


ふたりは「ね」と顔を見合わせた。


『おーい、美波。今日、海斗はおらんのかね! お前がいーつもびったんこに引っ付いてるから、嫌気がさしたのさー』


『そんなことないばー!』


『ついに、捨てられてしまったかねー』


『違うーう! にぃにぃは、美波を捨てたりしないさ!』