恋蛍~クリアブルーの風に吹かれて~

「……うん」


お母さんの気持ちが、なぜだかよく分かる気がした。


あたしも、時々、そうなることがあるから。


あの真っ黒で真っ直ぐな瞳に、吸い込まれてしまいそうで怖くなる。


「後で、海斗くんにお礼言っておきなさいね」


海斗くんが居なかったら、浜で倒れたままだったかもしれないものね、とお母さんがドアノブを回した。


ドアが開く。


「お母さん?」


仕事は? とあたしが呼び止めると、


「今日は休んだの。お父さんは行ったけど」


とにっこり笑った。


「民宿、忙しいんじゃないの?」


「陽妃のことほっといたら、また海斗くんに叱られちゃうもの」


そう言って、お母さんは部屋を出て行った。


まどの外を見上げた。


空がやけに青く感じた。


あたしはベッドから飛び出した。


なんだかもう、じっとしていられたもんじゃなくて。


急いでシャワーを浴びて、部屋に戻り、身支度を済ませた。


海斗に会いに行こう。


海斗に伝えよう。


ありがとう、って。


あたしのSOSに気付いてくれて、ありがとう、って。


伝えよう。


海斗に。













ところが、こういう時に限ってついてなかったりする。


こういう時に限って、すれ違いというものは発生する。


海斗の家の玄関は不用心にも全開だった。


「こんにちはー! いませんかー?」


大きな声で何度呼んでみても、応答はなかった。


「海斗ー? 居ないのー?」


あたしの声は儚くもしんと静まり返った比嘉家の奥に吸い込まれて行った。


待てど暮らせど、返事が返って来ることはなかった。