翌日、陽射しが眩しくて目を覚ました。


その光はやけに白く輝いて見えて、なぜか、寂しくなった。


「……あれ?」


あたしはベッドの中で何度も左手を握って開いてを繰り返した。


もしかしたら、あたしは夢を見ていたのかもしれない。


そう思ったりもしたけど、やっぱり夢じゃなかったらしい。


額からずり落ちたタオルは水分を失って、もうほとんど乾いた状態で枕元に落ちた。


ベッドの下にたっぷりの水を張った洗面器があった。


昨日、謎の熱を出し倒れてしまったのも。


浜から、あたしを海斗が運んで来てくれたのも。


暗い部屋で、海斗が看病してくれたことも。


夢じゃなかったらしい。


「……帰ったのかな」


当たり前か。


いくら家が隣だからといっても、海斗は海斗のやることがあるだろうし。


まさか、朝まであたしにつきっきりというわけにもいかない。


理由も分からないため息をついて、また左手を握って開いた。


頭はすっきりしていて、熱も下がったらしい。


昨日とは打って変わって、体が軽々としていた。


まどの外に広がっている青空はあんなにもすっきりと晴れ渡っているというのに。


あたしの心は曇天色だった。


左手を握って、開く。


ため息がもれる。


あたしは無意識のうちに、海斗の手を探していた。


確認すると、時刻は9時だった。


コンコン、ドアを叩く音がして、入って来たのはお粥を持ってきたお母さんだった。


「起きてたの?」


大きな器から、いかにも熱そうな湯気がもくもくと上昇していた。


「具合どう?」


「うん。大丈夫みたい」


ほんと? と心配そうな顔の、お母さんの手のひらが額に触れた。