大我もいなければ、がっつりメイクを楽しむ友達も、この島には居ない。


この集落には小学生や中学生はゴロゴロいるのに、高校生が居ない。


隣の集落にひとり、隣の隣の集落にもうひとりだけいると、お母さんと海斗のお父さんから聞いたくらいで。


なんて張り合いのない場所なんだろう。


鏡の中の顔を見つめて、情けなくなった。


ほんのりと日に灼けた肌。


変なの。


東京に居た時は少しの紫外線ですら気が気じゃなくて、ひたすら美白に執着していたくせに。


誰かに見せたいわけでもないけれど、たまにはメイクをしてみる。


のっぺり顔に下地メイクを施す。


お父さん譲りの幅広の二重瞼にアイラインを細く引き、マスカラを重ねる。


荒れ放題の眉毛を整えて、痩けた頬にオレンジ色のチークを叩いた。


顔色が良くなって見える。


いけないよな、と思いつつ、この島へ来てからはまともに食事をしていない。


ラッキーなのか、アンラッキーなのか。


おかげで、体重は2キロ落ちていた。


ただでさえ貧相な鎖骨がガリガリになって、気の毒になった。


焦茶色の髪の毛は、別に伸ばそうとして伸ばしていたわけじゃない。


でも、気づいたら背中を越して腰に届きそうになった。


大我はあたしの髪の毛に触れては、いつも呟いていた。


―さらさらロングの女って好きだなあ―


それなのに、大我が選んだのは可愛らしいボブのひかりだった。


やっぱり、ふたりの事を考えると心が乱れる。


あたしは伸び放題の髪の毛をひとつに束ねて、ぎゅっと握った。


切ってやろうか。