【新着メールはありません】


当たり前か。


期待していた分、ため息も深く重くなる。


東京に居た時は問い合わせなんてしなくても、メールが届いた。


頻繁に。


だけど毎日、元気? 、なんてメールしてくる人なんていない。


会おうと思えば会える距離に、みんな居たから。


だから、勘違いしていたことに気づく。


あたしには友達がたくさんいるんだ、と思っていたことに。


「あ……」


またひとつ、気づく。


昨日の雨に打たれたままの格好で眠っていたことに、呆れた。


シャワーを浴びてリビングへ行くと、予想通り置き手紙があった。


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本日、初出勤です。
夏はかきいれ時なので、帰りが遅くなるかもしれません。

ご飯は適当にお願いします。


父 母
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ああ、そうか。


海斗の両親が経営している民宿で、働くことになったんだっけ。


ふと、壁時計に視線を投げると、もうすぐ17時になろうとしていた。


いけない。


海斗と美波ちゃんが来る。


浜へ散歩しに行こう、と誘いにやって来る。


あたしは急いで水色のマキシワンピに着替えた。


ここ一週間のあたしは、まるでナマケモノだ。


たるみ具合が半端じゃない。


この島へ来てから一度もメイクをしていない。


常にスッピンだ。


気を抜いていたといえば、その通りだった。


東京じゃ、スッピンで外に出るなんて考えられなかったのに。