“頑張れ” それしか言わなかった。 いや、言えなかった。 「ただいま……」 足が重いのは僕の気のせいだろうか。 ドアを開け、家具や雰囲気が懐かしく思う。 「陸也」 母さんが僕の名前を呼びながらソファから立ち上がる。 そして僕に近づいてきたと思ったら……。 「え……?」 優しく、抱きしめられた。 「わたし、母親失格ね」