窓から見える夜景は美しいとは言いがたい。

 
無愛想面で突っ立っている三階建のビルや近くのコンビニ、高層マンション、道路を流れる自動車たち。

彼等の放つ光のおかげさまで街並みはケバケバしく彩られる。


主に光は黄で彩られているのだが、中には赤や白も交じっている。


人工的に発している地上の光のせいで星明りが弱々しく見えるのは、仕方の無いことなのだろう。


恍惚に光を見据えていた清瀬 蓮は窓ガラスを右の人差し指でなぞり、目を伏せ、そっと瞼を持ち上げる。
 

仲間内に名を呼ばれ、彼は首だけ捻った。


聞いているか?
問い掛けに、蓮は頷いて体ごと後ろへと方向を転換する。

彼が正面を向いたことで話し合いが再開された。


内容は『廃墟の住処』について。


『廃墟の住処』とは近場の商店街を指し、シャッター街化している。


ひと気のないその場所は不良達の集い場所として人気が高い。

蓮が属している浅倉チームは『エリア戦争』と呼ばれる喧嘩でその地を自分達の縄張りとし、今日まで支配下にしてきた。


しかし最近、その地がちょいちょい荒らされている。


昨日もそこに集っていた仲間二人が何者かに奇襲を掛けられ軽傷を追った。

本当に軽い怪我だったため病院沙汰にはならなかったが、連日このような事件が起こっている。


見過ごすわけにはいかなかった。
 

リーダーの浅倉は、「俺等に挑発してるのかもなぁ」苦虫を噛み潰したような面持ちを作って肩を竦めた。


「でなけりゃ、こーんな馬鹿な真似しねぇだろ? 俺等の噂、知らないわけでもないだろうに」

 
実力的にも手腕があり、更にかの有名なチームと同盟を組んでいる噂は不良の間で飛び交っている筈。

おかげ様で不意打ちと呼ばれるような喧嘩は吹っ掛けられようとも、正面から喧嘩を売られたことは片手で数えられるほど。