「あ、ちょっ」待ってくれたっていいじゃないか、俺の申し出に、「早くしろって」急かしてくるヨウは前橋に一言。



「先公如きが一々俺等の仲に口出してくんじゃねえよ。ナニも知らねぇくせに」



小生意気な事を口にした後、


「これだから先公は信用できねぇんだ」


ヨウはフンと鼻を鳴らして、俺に早く来るよう手招き。


失笑を零す俺は、同じく失笑を零している前橋に一瞥することもなくヨウの下に走った。次いで俺等は揃って階段を駆ける。


「ったく、世話焼けるぜ」


駆けながらヨウは俺に、真に受け過ぎだと舌打ち。


さっき言ったじゃねえかよ、もう忘れたのか?


問い掛けに目尻を下げる。


忘れてるわけないじゃないか。


ただな、俺にとって人生の大きな節目とも言える環境の変化が訪れてるから、何かと戸惑ってたり、ナイーブになってたりするんだよ。


だってそうだろ?


今まで平和・平穏・地味っつー名の日陰にいたんだから…、周囲の変化になっかなか慣れないんだよ。


それでも、さ。