俺は笑声を上げてキヨタをわざと地面に落とす振りをした。
一際悲鳴を上げるキヨタの体を受け止め、「無事に着地」小柄な体躯を地面に下ろしてやる。
「酷いっス!」抗議の声を上げるキヨタに、
「田山コースターは如何だったかな?」
稀に乗れるアトラクションだとおどけて右手を差し出した。
「へ?」間の抜けた声を出すキヨタに、「一回の料金五百円な」と満面の笑顔を向けてやる。
途端に、
「料金取るんっスか?! しかも高い!」
頓狂な声を出された。
おうよ、労働したんだから料金は取るものだろ?
今の時代、サービスには何でも金が発生するんだぜ! 俺も例外じゃないって。
傍で見ていた響子さんが呆れつつも、微苦笑して俺に言う。
「そうしていると兄弟みてぇだな」
本当にこいつは弟みたいだと思ってますよ。
目で笑い、俺はぶう垂れているキヨタの頭に手を置いた。
一変して笑みを浮かべるキヨタに綻ぶものの俺は内心で矢島を思い、気鬱を抱く。
矢島は本当に舎弟達に対して何も感情を抱いていないのかな。
俺だって最初こそキヨタとは成り行きで兄弟分になった口だけど、こいつの直向な気持ちに心動かされた。
少なくとも川瀬と谷は矢島を尊敬して止まない。
その気持ちに嘘偽りはないと思う。
何も感じていないんだろうか? 俺にはそうは思えないんだけど。
全員が集まると、ヨウは早速話を切り出した。
矢島を三日間ストーキングしてみたけど目ぼしいことは殆どない。
分かったことは舎弟に何かさせているってことくらいだ。
下手に動けないけど、あまり時間を要しても無意味。
こうなったら罠を仕掛けるかとリーダーは物申した。
「矢島のいっちゃんの狙いは多分、俺だ。馬鹿みてぇに俺に突っかかってくるのも、俺の言動を観察するためだと思えば合致する。
なら俺がオトリになって矢島を動かすよう仕向ける。その矢島を他の奴で付回すって作戦だ。どうだ?」
「そりゃ危険じゃないか」
響子さんの意見に、他に方法はあるか? ヨウが尋ね返す。
これ以上、矢島自身の情報を探ろうとしても意味は成さないだろう。
此方がアクションを起こさない限り監視も腰を上げはしない。だったら動くしかないとヨウ。
一週間くらい様子を見ても良さそうだけど、舎弟達の件があるしな。
早めに手を打っておくのも策だと思う。
だけどヨウ一人じゃ危険過ぎる。
誰かもう一人くらいはオトリにならないと。
皆、それに気付いている筈だ。



