目的のためなら人はなんだってできる。

矢島のほの暗い感情が、思わず気持ちを具体化させてしまいそうになる。


二人の目に映っている優しさが底知れぬ優しさというのならば、それは偽り。

まさしく自分達の関係のように。
 

矢島は目を細めて宙を睨む。余計な感情は捨てるべきだ。

“不良狩り”に手を染めると決めた時から、自分達は非道になると決めていた。

決めていたから。
 


(次の計画はもう動いている。そのためにはこの二人を……、所詮は不良だ。上手く利用してやるさ)



持っていたカツサンドを膝に置き、

「お前等。午後はサボらないか?」

あんとゲーセンに行こう、二人の頭に手を置いて微笑を向ける。


「あ、行くいく!」

「アンちゃんの奢りでお願いしますね」


同じ表情を返してくれる舎弟二人に目尻を和らげ、矢島は自分に言い聞かせる。言い聞かせ続けた。


上手く利用するために、今はこいつ等を大事してやろう、と。
 


そう、これは利用される不良への同情心に過ぎないのだ―――…。



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