ギブギブと相手の腕を叩いていたら、

「勝手に人の舎弟に」

手を出してるんじゃねえよブサイク、とヨウが俺の襟首を引っ掴んで助けてくれた。


その助け方に俺は嘔吐(えず)いてしまう。

イケメンよ、助けてくれる姿は女子に黄色い悲鳴もんだろうけれど(イケメンドチクショウめ!)、助けられた俺の姿をもう少し考慮してくれ。

お前のせいで可愛くない蛙の潰れたような声が出ちまったじゃないか!


咳き込む俺に対し、「出たなブサイク不良」相変わらず胸糞悪い面だと矢島は腕を組む。

ピキッ、こめかみに青筋を立てるヨウは軽く体を微動させた後、

「テメェほどでもねぇよ」

お前はブサイクの上にヘンタイさんだもんなぁっと珍しく穏やか口調で喧嘩を売った。

大体こういう場合、ヨウは形振り構わず感情のまま突っかかるんだけど。
 

もしかして探りを入れるためか? そんな頭脳プレイ、あいつができるもんかどうか。
  

「貴様よりはマシだ」

矢島はこの顔より勝っている自信があるとヨウの顔面を指差し、ブサイクというよりキモ顔だと手でシッシと払った。


途端にヨウが「ンだとテメェエ!」雄叫びを上げた。

うん、やっぱ無理だったな。
矢島相手に穏やか口調で喧嘩を売るなんて芸達者なことヨウには無理だったんだよ。

呆れ気味に利二と様子を見守っていると、

「あんちゃんが」
「ブサイクなんて」

「「聞き捨てならねぇ!」」

これまた吠えてくる不良が二匹。

謂わずも犯人は矢島ラブの舎弟二人。

矢島をブサイクと罵ったことに憤っているらしく、キャンキャンギャンギャンワンワン吠えてくる。

つくづく煩いよな、わんこ系不良って。


得意げな顔を作ってくる矢島がヨウを見下した。眼は訴えている。お前と違ってあんは賛美される不良なのだぞ、と。


眼力で自慢してくる矢島に、「俺だってな」可愛い後輩がいてだな、と何故か張り合うヨウの姿。

おいおいおい、お前、負けず嫌いを此処で発揮してどーするよ。

そりゃあ矢島相手に敗北って二文字を見るのはヤだろうけど。


……しょーがない、舎弟(と利二)の出番だ! 
 
 

「田山。自分は全力で遠慮しておくぞ」

 
 
と、俺の目論見を先読みした利二が全力で遠慮してきた。

「えー?」

ノリの悪い奴だと声を上げる俺に対し、

「自分はキャラじゃないんだ」

試しにしてみようか?
シラけると思うが責任はお前が取れよ?

利二は咳払いすると、重々しく口を開いた。