ぱちぱち。

ぱちぱち。


瞬きを繰り返し、俺は抱き締めてくれる彼女の体温をしっかりと貪る。
 

暴行事件は俺に多大な恐怖心と苛みをくれた。

おかげで俺はいざって時にヘタレの腰抜けになってしまう。

それはダサく情けなくしごく足手纏いなもの。


それでも屈託ない仲間の優しさに、彼女のぬくもりに、俺を必要としてくれる皆の気持ちに想うことがある。


俺みたいな思いをして欲しくない、と。


利用される犠牲。離脱の苛み。暴行の恐怖心。

どれも味わって欲しくない。
仲間には、チームには、抱き締めてくれる彼女には。


本当の恐怖を想像してしまい、俺は想像につい畏怖してしまった。
 

嗚呼、胸が熱くなる。震えが止まる。決意が固まる。

恐怖しながらも前を向ける勇気を今度こそ手に掴む。

第二の俺が出るかもしれないと言うのなら、俺はいつまでもヘコたれている場合じゃない。


大丈夫、怖くなったら仲間がきっと支えてくれる。

今日のヨウ達みたいに。今傍にいてくれる、ココロみたいに。


「ケイさん。好きです」


少しだけ顔を持ち上げた。

相手を見上げると、まるで癒すように額にキスしてくる。

反則だと思った。
本当に反則だと、思った。


「ココロ」


ぬくもりから抜け出さないまま俺は右の手を相手の後頭部に回して引き寄せ、そっと唇と気持ちを重ねた。


だいじょーぶ、俺は独りじゃない。

多大な恐怖心を知った俺だからこそ俺なりに、チームに対してやれることがある。里見等の目論むシナリオにだけはさせない。 

 
⇒#03