疲れた。

畏怖している真新しい記憶のせいで様々な感情が交差。

あっちこっちに振り回された上にわぁおリバース事件まで起したせいか、心身疲労している。

今も瞼の裏に焼きついている暴行事件に身を縮みこませている俺がいたりいなかったり。

思い出すと胸が締め付けられる。それこそ痛みが迸るほどに。


自然と震える手を重ねてくるココロの手は一回り小さかった。


「だいじょーぶ」


怖くなくなるまで一緒にいますよ、丸び帯びた声は俺に安らぎを与えてくれる。

だからなのか、自然と今の本音が出た。疲れた、と。

今日は無理し過ぎたかもしれない。

自分から倉庫探しの案を出したとはいえ、頭と心と決意がついていかなかった。

人間って単純なようで複雑な感情を持つ生き物だなぁ。


彼女に淡々と告げると、「ケイさんは」頑張り屋さんですからね、とココロ。

仕事熱心なところは日本人の気質だそうですよ、冗談ほのめかしに笑う彼女がゆっくり休んでくださいと言葉を掛けてくれた。


ただそれだけの言葉。

けれども俺には価値のある言葉。


不思議と冷たく微笑んでくる記憶が塗り消されていく。

 

「独りにだけは絶対、させてあげませんから」
 


小さな手が俺から離れた。

代わりにその手は俺の頭を引き寄せ、そっと抱いてくる。

重たくなってきた瞼を持ち上げた。 
 

視界に飛び込んでくるのはココロの纏ったセーラー服。

眼球を動かせば見慣れた金網フェンスが見えた。錆が目立っている。


土で固められた敷地に雑草、日光も俺の目に飛び込んでくる。


投げ出されている俺の足先も視界端に見えた。