倉庫を後にしてから始終ダンマリになる俺は(どう戻ったか記憶も曖昧だ)、なんとなく自分を見つめなおしたくてスーパー付近のたむろ場に戻ると仲間の輪を外れた。
家に帰ってもいいって言われたけどそんな気分でもない。
体調は幾分マシになったし。
ただ情緒は低空飛行もいいところ。
ぼんやりと木材の上に寝そべって目に沁みる青空を見つめる。
「今回ばっかしは足手纏いも足手纏いになりそうだな、俺」
そんな独り言を口ずさんでみるけど、それで終わり。
独り言は空気に溶けて消えていった。
決して澄んでいるとはいえない都会の酸素を胸いっぱい吸い込んで、俺はひたすら現実に怯えている自分と向かい合う。
乗り越えないといけない恐怖心と分かっていても、どうしても乗り越えられない恐怖がまざまざと俺を嘲笑してくる。
今の俺じゃいざとなっても足が竦んで動けないに違いない。まともに喧嘩に参戦できるかどうかも危うい。
そうしてチームをピンチに追いやってしまうだろう。
容易に想像できてしまうから恐怖心が増大する。
嗚呼、記憶が冷たく微笑んでくるんだ。
どうすればいい、どうすれば乗り越えられるんだ。この恐怖心。
片腕で顔を隠し悶々と自分の中の恐怖心に、思い出してしまう暴力の光景に、近未来におののく。
なにも分からない。
なにも分かれない。
なにも分かることができない。
燦々と降り注ぐ日光を体いっぱいに浴びる。
あったかくなる体とは反比例して、冷たくなる心に嘆きたくなるばかりだ。
溜息をついて外の風に当たっていると、砂を踏みしめる小さな足音が聞こえた。
顔に当たっていた直射日光が消える。
俺は体を微動させて腕をずらす。
「具合はどうっスか!」
満目いっぱいに飛び込んできたのは、太陽に負けない目映い笑顔を浮かべた後輩。
「キヨタ」名前を紡ぐと、「水分補給は大事っスよ」何か飲みませんか? と声を掛けてくる。
気分的に何もいらなかったから遠慮したけど、
「ダメダメ!」
水分補給しないと!
さっき水分を出したんっスから!
と、まだ記憶に真新しい事件を思い出させる発言を告げてくる。
いや、あれはほんっとすんません。お世話なりました。助かりました。迷惑掛けてスンマソです。



