取り敢えずノリでカバーしていたけど、ノリさえも出なくなったら、残るは苛立ちのみ。
陰に落ちていた長い煙草の吸殻を見るや当時の記憶を思い出し、「くそっ!」積み重なったダンボールを故意的に倒して中身をぶちまけた。
気が治まらなくて何度もそれを繰り返す。
「ケイさん!」
どうしたんっスか!
キヨタが飛んでくるけど、もう知らん。知らん知らん知らん!
すべてに腹が立つ!
何がいっちゃん腹が立つって弱い俺に憤りを覚えて仕方がないんだよ。
里見達の声を聞いてガタブルに怖じた俺にも腹が立つし、奴等に利用されそうになった俺にも腹が立つ。
矢島が繋がりを持っているってことにも恐ろしくて腹が立つんだよ! 分かるか?! 俺のジレンマ!
こんな目に遭わせた奴等に憎しみさえ抱きそうだ。怖いくらいに。
癇癪を起こしたガキのようにダンボールを払う俺を止めに入ったキヨタに、「阿呆みたいだ」自分が分からなくなりそうだと自嘲を零す。
情緒が捻じ曲げられそうで怖い。怖いや。
心がとがっていくのが自分でも分かる。
「アイッ、ッデー!」
突然腹部に肘が飛び込んできた。
悲鳴を上げる俺を余所に犯人は「テメェは疲れているんだ」ちと休め、とにこやかに微笑んでくる。
こ、こんの、傍若無人イケメソ男っ…、お前、人が落ち込んでいる時に、しかも具合が悪い時に肘鉄砲とか最悪だろ!
せめて背中に蹴りとかっ、うへっ、ありえねぇ!
「おま、え。最低」
しゃがみ込んで犯人に非難を向けるけど、
「バッカ。俺は最高だろ?」
なんたって舎弟を心配してやる舎兄なんだから、とヨウは得意げに一笑する。
……ほんっとお前って最高に最低だよ。
人が取り乱しているにも関わらず、いつもどうりに接して肘鉄砲アウチなんだからさ。マジ最高に最低だ。
リーダーはチームメートを発狂させてくれないらしい。
優しくねぇよ。
俺だって癇癪を起こして起こしておこして大暴れしたいのに。
お前はいつもの俺に戻そうと強引な手口を使ってくる。
暴走しかけたシズもそうやって止めただろ、お前。
もっと優しいリーダーになれって。
お前の愛はすこぶる痛いから!
そ、そしてな。
腹部を刺激したのは失敗だと、マジで思うぞ。今のはトドメだった。
「うぇっ…、リバース手前…、が、がまん…しんどい…、おれもうむり。さよなら、えちけっとまなー」
俺の言葉にゲッとヨウは声を漏らし、「無理か? マジか?!」どうしようと一変して狼狽し、仲間に何か良い案はないかと慌てふためく。



