「あいつ等がもし」
里見達の仲間なら、真杉戦で協力などしてくれなかったに違いない。
身を挺してまで庇ってもらった恩義もある。
あれが演技に見えるかと聞かれたら否だとモトは顔を顰める。
つまり二人は“不良狩り”など知る由もない、普通の不良なんじゃないかとモト。
間を置いてキヨタがそれに同調を示した。
「超気に食わないッスけど、あいつ等…、俺っち達に協力してくれたッス。
ココロさんを助けてくれたってのもありますし、やっぱ…、クロは矢島一人なんじゃないかと。なにより真杉事件に巻き込まれた奴等ッスから」
「うーん、考えられるとしたら…、矢島が舎弟を使って僕ちん達の動きを見ようとしたってところかもしれないねんぴ。
シュンちゃーんはいなかったんでしょ? でも途中参戦してきたわけだし」
「あ、そういえば…、なあモト。あの舎弟二人って舎兄に連絡を取ってたか? 俺っち達はココロさんを通してヨウさん達に連絡を取っていたけど」
「……あ」
当時の状況を思い出したモトとキヨタは顔を合わせる。
なるほど。
ますます矢島のクロ説が深まるわけだな。
だって連絡も取っていないのに、どーして舎弟達の居場所が分かったのか。
更に危機に直面した二人を助けられたのか。
謎が深まるばかりだもんな。
普通に考えてキャツが舎弟達の居場所を事前に知っていたとしか考えられない。
じゃあ俺がどうして保健室で寝ていたのかも、怪我をした理由も当然知っていたんだなー…、うぇつ、胃がぐるぐるなんだぜ。
胃におさまった昼食が洗濯機の渦に巻かれているようにぐーるぐる。気分悪い。田山グロッキー。もうノリも出ねぇ。
……あれ。
俺の脳内がチャンネルチェンジした。
それは監禁されていたあの二日間。朦朧とした意識の中でゼリー飲料を食わせてくれた奴は、「あんまりだろ」ぶっきら棒に俺の姿に同情し、愁い帯びた眼を向けてくれた。
今ならはっきり思い出せる。
あれは矢島だった。
ということはあいつは俺を介抱(もどき?)してくれたのか?
うんっと首を傾げる俺はその旨を仲間に伝えようとした、が、ぐはっ…、もう限界。圭太の目の前は真っ白になりそうだ!
で、でもせめてエチケットは大切にしたいっ、この俺の優しさ! 俺ってばエラーイ!
「ご、ごめん…、おれ…向こうのダンボール陰…行くから。はきそ」
皆はそこにいていいから、俺はよろよろ立ち上がって積み重ねているダンボールの陰に足を伸ばした。
「おい大丈夫かよ」ヨウの言葉に、「だいじょばない」最後のノリをかまして俺はダンボール陰へ。
そこで嘔吐こそしなかったけど(俺がむばった!)、頭が真っ白になりかけた。
というか暴れた。
多分俺は吐き気と並行して精神的に限界だったんだと思う。



