ヨウ達が体を屈めた。
間宮がこっちに来たらしい。
身を強張らせる俺に大丈夫だと耳打ちするヨウは、息を潜めていればバレないと告げてくる。
尤も相手が犯人でなければ気付かれないだろうけれど。犯人なら……、その先は謂わずもがなだ。
格子窓から差し込む光に陰りが差した。
見えた人影に息を呑み、俺達は相手の出方を窺う。
「やっと来たか。何をしていたんだ、カズサ」
「ごめんごめん。バイトの休憩時間が先送りになっちゃってさ。勤労学生はこれだから辛いよ」
間宮の声に、あの忌まわしき飄々口調は里見上総!
うげぇええっ、グロッキーもグロッキーになってきたぞ!
俺の胃がうぎゃぁあああっ、あいつ等きたぁあああっ、リバース、リバースするくらい怖い! って嘆いているんだけど!
千行の汗を流す俺を余所に、壁の向こうで集会らしきものが始まる。
内容は不良狩りの現状。
里見が率先して説明やら提案やらして仕切っている。
筒抜けの内容を耳にしている限り、向こうは俺達に気付いていないのかもしれない。
もしくはこれも罠か?
いやそんな感じにはまったく。
十分程経った頃、集会は幕を下ろしたらしく複数の気配が動くのが分かった。
暫くすると気配の数がグンと少なくなった。
間宮と里見はまだいるらしい。
「不良は利用しやすいね」
愉快を含む里見の声音が鼓膜を打つ。
ピキッとヨウのこめかみに青筋が立ったようだけど、状況を見ているのか静かに息を潜めるばかりだ。
「あっさりと動いてくれるんだから助かるよ。これでまた潰しあってくれたら万々歳さ」
「おやおや。貴方の思惑どおりにいかないことも多々あったでしょうに」
初めて聞く声だな。誰だろう?
「煩いなマッキー。ぼくは順調に事が進んでいると思っているんだよ。そりゃあ、日賀野や荒川は簡単に狩れないけど。あいつ等もいつか狩ってやるさ。血の気の多い不良ほど馬鹿だからね」
ブチッ、ヨウの青筋から音が聞こえた。
若干体を震わせるイケメン不良にワタルさんが笑いを堪えながら首を横に振る。
我慢しろってサインだ。
ヨウだってそりゃあ分かっているだろうけど、腹立たしいのも否めないらしい。
言いたい放題言いやがって、と憤っている。



