青騒のフォトグラフ Vol.2 ―夜嵐の不良狩り―



何か情報を得られるかもしれない。

質問を重ねてみるけど名前を聞いたことあるだけらしく、どういう奴かは知らないと言う。


はてさて何処で聞いたのやら、右に左に首を傾げる矢島は自分の手首に視線を流した。

弥生が包帯の結び目をソーイングセットで切り始めている。

結び目を解こうとするのは不可だと判断したらしい。


小さなハサミで器用に結び目をちょん切っている。


するっと包帯が解けた。同時に解放される俺と矢島の手首。

自由になった利き手に俺はホッと息をつく。

こきこきと左手首を鳴らす矢島はやっと自由になったと肩を竦め、颯爽と腰を上げる。


まるで俺に非があるような言い方だけど、元凶はお前にあるんだからな。矢島!


舎弟二人を呼ぶ矢島は、「不良狩りだか何だか知らんが」あん達より目立つことはするなと釘を刺してくる。

でないと自分達が目立てない。


どちらにせよ、いつかは荒川の名を矢島の名で塗りつぶしてやると矢島は挑発的に物申した。


「その、里見上総等が何をしているか知らん。貴様等が不良狩りとやらに関わっているのも、なんとなくパシの怪我を見れば分かるが…、あんより目立つな!」


フンと鼻を鳴らして矢島が舎弟二人と共に去って行く。

相変わらず外部に厳しく、身内には優しい兄分らしい。

駆け寄ってくる舎弟達の頭に手を置いて、「何食いたい?」今日は奢ってやると二人に綻んでいる。

ったく、結局なんだったんだよあいつ。あー痛かった。


利き手の手首を擦る俺は、地に落ちている包帯を拾う。弥生が気遣って切ってくれたおかげで、まだ包帯は使えそうだ。

「やりましょうか?」

片手で器用に患部を巻く俺の姿を見かねたキヨタが声を掛けてくる。

「ごめん。そうしてもらえると助かる」

俺はキヨタに包帯を巻いてくれるよう頼んだ。

キヨタは包帯を受け取り、患部にそれを巻き始める。

圧迫しすぎないように巻いてくれる手つきは手馴れたものだ。


きっと習い事で包帯を触る機会が多かったんだろう。


作業を眺めていると、「矢島って奴」ちょっと怪しいな、モトが眉根を寄せた。

顔を上げる俺はなんで、と瞬きをする。矢島達は不良狩りの件を知らなかったみたいだけど。


するとモトの代わりにワタルさんが怪我の指摘が怪しいと意味深に鼻を鳴らす。