「んーっと、シュンちゃんってもしかして自分より目立つ奴嫌い?」
誰がシュンちゃんだと矢島は舌を鳴らす。
矢島俊輔だからシュンちゃんなんだろうけど…、ワタルさん、相手は一個上の先輩ですよ。留年して同じ学年にはいるけど。
つーんとそっぽを向く矢島は腹立たしいだけだと素っ気無く返す。だから荒川も腹が立つ。
何よりも腹が立つ男だと、美形不良はギッとイケメン不良を睨む。
ついでにうぇーっと舌を出す美形不良、「お前はガキか!」イケメン不良が激しくツッコんだ。
「ふん、ガキという奴がガキなんだ。ブサイクのくせに、のうのうと目立ちやがって腹が立つ。ブサイクのくせに」
「こ、こいつ…、二度もブサイクなんざ言いやがってっ。なんだテメェ、目立ちたいのか?」
「正しくは知名度が欲しいというところだな。以前、貴様を狙ったのは存在自体が気に食わないというのもあったが、大いにあったが、一番は知名度が欲しかった」
シニカルに笑う矢島に眉根を寄せるヨウは“知名度”って単語に過剰反応した。
「テメェ」まさか“不良狩り”に関わってるんじゃねえだろうな、どすの利いた声でリーダーは唸る。
そういえば里見等が利用した不良達ってどいつもこいつも知名度が欲しかったって言ってた。
俺もそれで狩られたわけなんだけど、矢島も関係しているんじゃ。
だけど矢島はキョトン顔を作り、「不良狩り?」なんだそれ、新たなゲームか? と首を傾げた。
「千草。渚。知ってるか?」
「いいえ、初めて聞きましたけど…、渚、知ってっか?」
「んにゃ。“親父狩り”なら知ってるけど」
どうやらシロのようだ。
三人は知らないとばかりに肩を竦めてきた。
安堵の息をつく俺だけど、「じゃあ里見上総って知っている?」ハジメが続け様、質問を重ねた。
まだ三人の腹の内を探っているようだ。
すると矢島が顎に指を絡めて一思案する素振りを見せた。
「あんちゃん知ってんの?」
谷の問い掛けに、生返事をする矢島。心当たりはあるらしい。



