久しぶりに見たそいつは、やっぱり癪に障るほどのイケメン。

染まった金髪とそれに混じった赤メッシュを夕風に揺らして喫煙していた。


ただいつもと違うのは左頬にガーゼが当てられているってところ。

喧嘩をしたんだろう。
 

偶然にも探していた仲間の居場所を突き止めてしまった俺は、視線を戻してどうしようかと思い悩む。


皆、シズの部屋にいたのか。

一件で集まる場所を室内にしたのか、それとも今日はたまたまシズの部屋にいるのか、それは分からない。

ただ今は思い悩む。


皆の下に戻るべきかどうかを。


もう一度だけ窓を見つめてみる。

仏頂面に窓の向こうを眺めている舎兄は、「テメェは俺のおかんか!」お小言を漏らしている響子さんにツッコんでいた。


つい笑ってしまう。なんか相変わらずみたいだな。

安心したよ。


わりと元気そうで本当に良かっ―…あ。
 

何気なく視線を下ろしたヨウとバッチシ視線がかち合う。

暖と冷が入り混じった夕風が俺達の間に吹いたのは神様の気まぐれだろうか?


頭が真っ白になる俺に対し、真ん丸お月さんのように目を丸くするヨウ。


ちょ、待って。

この急展開はありえないんだぜ。まだ心の準備もなにも。
 

プチパニックを起こして佇んでいるとヨウが先に動いた。
 

けたたましい音を出しながら窓辺から姿を消したんだ。そして聞こえて来る扉の開閉音と階段から聞こえる靴音。


やばい…、あいつ、足が速いからすぐ此処まで来るぞ。


俺は血相を変えて地を蹴った。

これはもう条件反射と言っても過言じゃない。

逃げてしまえという自己防衛が働いた。

後先なんて考えず、とにかくこの場から逃げ出したかった。
 

アパートを通り過ぎ、俺は百メートル先の曲がり角を目指した。

けどそれだけじゃきっとヨウに追いつかれるし、俺は本調子じゃない。

五十メートル走っただけでも息切れも息切れだ。

曲がり角を曲がると近場のマンション駐車場に逃げ込んだ。