それに倉庫にヨウ達がくれば少しは有利になるって…、どっかで思っていたような。

確か俺は倉庫に備え付けられていた格子窓から外の景色を眺めていたんだよな。


明確な場所は出なかったけど特徴ある景色に…、えっと、なんだっけ。


あれ思い出せないぞ。

なんか重要なことを忘れている気がする。
 

懸命に思い出そうとするんだけど先に暴行の記憶が邪魔して先に進めない。そっちの方が記憶が強いんだろう。


「なん、だっけ」


ぼんやりとしていた俺は痛み始めたこめかみを擦る。

どうしても思い出せない。思い出したいのに思い出せない。


「圭太」


今は自分を大事にしろよ、言葉を掛けられて俺は健太に視線を流す。

肩に手を置く健太は首を横に振って今は無理をしても一緒だろ? と微苦笑を零した。

俺は力なく笑う。

それもそうだな。
無理をしても一緒だな。

思い出すのはやめておこう。


情緒不安定だし、まーた涙腺が緩んだら大変だ。

折角涙が止まったところだっていうのに。
 

「ごめん。また心配掛けて」

「いいんだよ。おれも随分お前に助けてもらっているんだし。
圭太とは荒川チームとして見ているんじゃない。友達として見ているわけだし。だから余計なことも言うわけで?」
 

なんかあったらまた頼れよ、飛んでくるから。

健太の微笑に俺も同じ表情を作る。


ありがとう健太。

お前のおかげで自分を大事にしてやれそうだ。


自分を大事にしながら、今、自分がどうしていけばいいか考えてみようと思う。

何より自分の弱さを認められた。


「牛乳のおかわりいるだろ? 作ってきてやるよ。最近の安定剤のひとつなんだ。これ」

「うん、サンキュ」


これだけで今は大収穫だよな。
  

 
⇒#10