「そういえば健太。お前、ヨウ達に手を貸したって言っていたけど。あれは?」


ふと俺はさっき健太が言っていた言葉を思い出し、疑問をぶつける。

俺がぶっ倒れている間に随分事が変化したみたいだけど。

健太は生返事をすると、それはチームに聞くのが一番だと返した。

事情はチームに聞けってことか。
  

「おれは取りあえず、お前のために手を貸したって言っておく。あくまでおれが荒川チームに手を貸すのは友達がいるからだしな」

「手錠もお前が外してくれたのか?」
 

自分の左手に嵌められていた手錠を思い出し、俺は健太に質問を続ける。
 
断片的にしか思い出せないけど、俺は失神寸前。

それこそヨウが来てくれるまで手錠を嵌められていた記憶がある。


ということはヨウが健太を連れて迎えに来たってことか。

倉庫外に放置されていた記憶に眉根を寄せつつ俺は健太に尋ねた。


「確かに」


手錠は外したけど、でも既に手錠は意味を成していなかったと健太は言う。
 

どういう意味だ? 追究を続ける。

健太曰く手錠の鎖は既に切られていたらしい。

つまりヨウ達がなんらかの道具を使って鎖部分を切り、俺を運んだってことになる。


「路地裏に転がっていたらしいけど」


おれはその現場にはいなかったよ、健太は軽く眉根を寄せる。

後日意識のない俺と会って手錠を外してくれたらしい。俺は目を丸くした。


「路地裏? 俺、路地裏にいたのか? あれ…、おかしいな。てっきり倉庫の外に野ざらしにされていたのかと思ったんだけどな。
あの時は意識が朦朧としていたから。一日目にさ。俺、一晩中倉庫の外で放置されていたんだ。
なんの鬼畜プレイだって思ったんだけど…、なあ、何処の路地裏か聞いてねえ?」


「さあ。荒川さんが見つけたってことしか知らないな。って、圭太。もうすっかり舎弟モードじゃないっすか。どんだけ真面目だよ」


「いや…、純粋におかしいなって思って。どうして俺は路地裏なんかに」


随分負傷していたから自力で歩いた記憶はない。

倉庫の敷地外に出れば誰かの目につく可能性もあるってのに。雨は降っていただろうけど、時間帯的には人目が多かった筈。

ヨウ達との電話が夕暮れの刻だってのは憶えているし。

大した意味はないんだろうけど、微妙に気なるな。