あんなにノれないなぁって落ち込んでいたのに、急にどうしたんだろ? 本音を吐いたせいか?

右頬を掻く俺は謎いと首を捻る。

「まあ調子ノリが調子ノリじゃなくなったら」

ただの田山だもんな、俺の呟きに、そんなことないと健太は指差してくる。
  

「ノリを取ったらお前はおれみたいに、クール田山になれるぞ。つまりクールガイデビューだ!」

「そうか、調子ノリを取ったら健太みたいに似非クールか。だったら俺は調子ノリでいいや」
 

「うっわ失礼!」ちゃぶ台を叩く健太に笑みを返す。自然に笑えることが嬉しかった。

やっといつもの自分を見出せた感じ。

きっと健太が俺の気持ちを見透かして、それを指摘、理解してくれたからだろう。


不良の世界に入ってしまったことに後悔はないし、ヨウ達と出逢ったことには感謝している。それは本当。


でもふとした時、俺は不良の世界から逃げ出したくなる。

前みたいなジッミーな生活に戻りたくなるんだ。

誰にも言えない本音だし、ましてや俺をそっちの道に引きずり込んだヨウに言えるわけもない。

喧嘩は根本的に苦手なんだろうな。

最近は出しゃばって喧嘩に参戦していたけど、再認識した。


俺は喧嘩なんて大それたことは無理だし、足手纏いだし、俺自身も苦手!


その事実を踏まえた上で里見達から受けた暴行を見据えると、そりゃすぐには立ち直れないんだろうな。

ただの喧嘩ならまだしも、二日間ゲーム感覚でヤラれちゃあ俺も病むってもんだ。

俺だって最強じゃない。
病むもんは病むし、泣くもんは泣くし、逃避するもんはするんだ。

幾多に渡って喧嘩はしてきたけど、それなりに判断力はついたけど、でもやっぱ苦手だし、ぶっちゃけ嫌いだ。好きなんてこれぽっちも思わない。


なのに首を突っ込むのは自尊心(プライド)からなんだろうな。

負けず嫌いの調子ノリも厄介な性格だぜ。
  

うん、自分の弱さを見つめてちゃんと認めてやると、心の重みが取れた気がした。

ウジウジする俺も受け入れられたよ。


俺は弱さや恐怖を受け入れることなく、前に進もうと無理していたからパンクしていたんだ。

もう大丈夫な気がする。

蓮さんの貰った励ましと背中を押してくれた行為に今度こそ応えられそう。健太の支えのおかげで。