日賀野チームに属している山田健太(通称:ケン)はその日の放課後、帰路とはまったく正反対の道を歩いていた。

決して遊びに行くためではなく、かといってたむろ場に足先を向けているわけでもなく、通学路外の大通りを速足で過ぎて行く。


面持ちは硬く険しい。

焦燥感に苛まれながら歩いていたせいか、連れのアキラに歩くのが速いと文句を頂戴してしまう。


首を捻って苦笑交じりに詫びを口にするものの、表情は硬いまま。


ダークブランの髪を揺らし歩調の速度を変えず、寧ろ速度を上げて歩く始末。

アキラは自分が歩幅を合わせるしかないと肩を竦め、歩く速度を上げた。
 

「ケン。直接こっちが赴かなきゃなんないのかのう? 電話は通じんのか?」
 

前を歩くケンにアキラが物申す。

「通じなかったんです」

平坦な声音で返すケンは手っ取り早く会いに行く選択肢を取ったのだと話した。

ケンが向かっている目的地は中学時代の友の家。

昨日、帆奈美伝いに突拍子もなく荒川チームから連絡が入った。


それは迷惑メールが届いていないかという不可解な質問。


よくよく理由を聞けばケイが危機に晒されているとのこと。

迷惑メールに彼に関する内容が記載されているというのだ。


事情を聴き、自分は急いで携帯を確認したが何も届いておらず。

偶然にもケイとメアドを交換していたヤマトが自分に届いていたと言ったため、荒川チームに伝えたが、それ以降の情報は入ってきていない。

果たしてケイは無事なのだろうか。
いや無事だと思いたい。

仲間達が救ってくれていることを願いたい。

かの有名な日賀野大和と肩を並べた荒川庸一の下にいるのだ。きっと無事だろう。無用な心配なのかもしれない。


(それでも、なんだ。この胸騒ぎは)
 

感じる胸騒ぎに吐き気が込み上げてきそうだ。