「ごめんモト。後は俺っちがするから」


毅然とした声でキヨタが言うと、瞼を下ろしている舎兄を受け取ってベッドに戻す。

胸上まで毛布を掛けるキヨタの背を見つめるモトの視線に気付いていながら、

「貴方の仇は必ず」

キヨタは舎兄に決意を誓った。

その場で項垂れて洟を啜るキヨタは必ず仇を取るから、だから休んで欲しいと下唇を噛み締めている。
 

「ケイさん、本物の舎兄弟になるって約束してくれましたよね?
どんな姿で戻ってきても貴方は俺っちの、ソンケーする兄貴ッス。

これから先もっ、俺っちの慕う兄貴ッス。貴方はよくっ、やりました。後は俺っちが、俺っち達が」


涙声になる親友。

モトは何も言わず肩に手を置く。


身を微動させているキヨタは必ず、仇は討つと繰り返していた。

それが舎弟としてできることだと自分の膝を拳で叩く。


次の瞬間、

「う゛わぁああんケイさぁああん!」

勢いよく飛びつこうとした。

「バッカ!」

大慌てで羽交い絞めするモトは、その行為をやめるよう喝破し、足を踏ん張る。


「引っ付いたら、ケイの熱が上がるだろう!」

「だぁあってぇええ! ケイさんっ、苦しんでるのに何もできないなんて! おぉお俺っちもちょっとリンチされてくる! 舎兄弟は痛みを分かち合うもんだ!」


「寧ろお前までヤラれたらチームはピンチだろうよ! ちっと落ち着けっ! さっき大丈夫つっただろ! もうちっとしんみりしとけよ!」


「やっぱり大丈夫じゃなぃいい! 俺っちもケイさんと同じ道を辿るぅうう!」

「阿呆か! 何処まで運命共同体にしたいんだ! いや気持ちは分かるけどさ!」



「……、どうでもいいが…、静かにな。頼むから。ケイは眠っているし…、なにより、隣人と…、揉め事を起こしたくない」



シズの切な注意は二人に届かず、光景を見ていたワタル達は小さな笑声を漏らした。


つかの間の休息だった。