「―――…ということで、お前は今から荒川の舎弟として一芝居打ってもらう。
まずは昼休みに行動を…、って、おい聞いてるのか? ボケーッとした顔をしているが」
「聞いているのか、お前! あんちゃんがありがったく説明してるんだぞ!」
「そうだぞ、お前は今から俺達のパシリなんだからちゃんと聞け! 出来なきゃフルボッコだぞ、いいか!」
んなこと言われてもなぁ。
ポリポリと頬を掻いて、「はぁ」俺は取り敢えず相槌を打つことにした。
俺の気の抜けた返事が気に食わなかったのか、分かったのかとブルー不良二人組が喝破してくる。
不良に免疫がついているとはいえ、見知らぬ不良に脅されるとやっぱり怖いわけで…、俺は「ハイ!」元気良くお返事してみせた。
本当にこいつ使えるのか、訝しげな眼を飛ばしてくる二人に俺は心中で罵倒。
俺をフルボッコ、だと?
ははん、やれるもんならやってみろ!
すーぐにフルボッコされちまうんだからな!
幾つ喧嘩の場を踏んでも、なっかなか喧嘩の腕は上がらないんだからな!
ついでに心の中の俺はいつだって勝気だからな!
覚えとけドチクショウ!
心の中の俺が不良達にあっかんべーとしている余所で、
「人選ミスったか?」
灰色髪不良が腕を組んで、満遍なく協調性のないジミニャーノを観察。
うん、確かに人選ミスだよ。
だって俺、正真正銘の田山圭太だもの。荒川の舎弟だもの。一芝居打たなくても、田山圭太の役回りは完璧なんだぜ!
……しっかしショックだよな。名前は売れっ子なのに顔を割られてないなんて…、悪い意味で名前が売れるのはヤだけど、顔を覚えられてないって結構ショック。そんだけ俺、顔の印象薄いのか?
と、灰色髪不良改め、矢島 俊輔(やじま しゅんすけ)が俺の胸倉を掴んで、ギッと睨んでくる。
「お前、さっきから集中して話、聞いていないな?」
うわぁあああっ、すんませんっ、俺ワールドに入ってました!
いっやぁー、俺の得意技の一つなんですよぉ! 俺ワールドに入り込むという名の現実逃避!