―――…気付くと俺は壁に背を預けていた。
アイテテ。全身が痛い。リンチとか久々に経験した。
うん、やばい。眩暈が止まらない。
それ以上に何もできない自分に歯がゆい。
嗚呼、意味を成さない言葉を漏らし、俺は里見の吐き捨てた台詞を思い出して自分のことのように悔しく思う。
「ははっ、ヨウ。あいつ等の言葉、聞いたか?
気付かないだってよ。気付いても手遅れだってよ。完全に舐めてるよな。
でも俺、信じてるから。お前なら…、舎弟なら…、皆なら…、絶対に気付いてくれるって。
いつまでも“俺”に成りすまそうとしても無理があるさ。
俺自身も手遅れになんて絶対させない。させてっ、堪るかっつーのっ」
……けどごめんな、ヨウ。
俺が弱いばっかりにまた利用されそうになっちまって、マジダッサイのなんのって、ダサ過ぎて申し訳ないよ。
チームにも迷惑掛けちまう。
とか卑屈になっても一緒だよな。
俺も何か、なにか、しないと。
んでもってちょいタンマ、行動する前に休憩させてくれ。
体が痛いんだ、切に。
こめかみからまた血、流れてきたみたいだし。
「俺、いつまで此処にいりゃいいんだろう? 腹減ったなぁ。喉も渇いた」
重々しく息を吐いて、俺は冷たいコンクリート床に横たわったまま視線だけ格子窓に目を向けた。
青々と澄んでいた青空は、熟れた林檎のように真っ赤っかな茜空へ化粧を始めている。
「皆、何してるかな」
ぼやきは閑寂な室内に溶け消えた。
あーマジで腹減った。喉も渇いた。布団の上で寝たいな。
チームの皆に会いたいな。馬鹿騒ぎしたい。
舎兄や舎弟、今頃なーにしてるんだろ。
彼女は笑ってるかな。
屈託笑ってるかな。
……そうだったらいいな。
今の俺には到底手に入らない贅沢を思い描き、体力を回復させるために瞼を閉じた。
左手首を拘束している手錠が邪魔だと思いながら、いつか仲間達が事態に気付いてくれることを信じながら。