「俺をフルボッコってか?」

取り敢えず挑発的に物申す。

「いや壊す」

あっけらん顔で答えてくれた。

なーんてこったい、慈悲深い台詞に震えてきたぞ。

まじだぞほんとだぞほんきだぞ。

壊すなんて鬼畜ですね!
俗に言うSMプレイですか?!

残念なことに俺はNなんですがっ、痛いの大キラーイ! だからって痛みを与えたくもなーい! な超ノーマルな子なんですけど!

最近の若者は物騒だから圭太、困っちゃう!


「簡単は壊さないけどね」


俺の携帯を投げてキャッチすると、「仲間が気付いた時には」ぼーん、すべてが手遅れってな具合さ、里見は無慈悲の笑みを貼り付けたまま意気揚々と教えてくれた。

手遅れだと? 
ナニをしたいんだよ、お前等は不良を狩ってナニをしたいんだっ。
 

「舎弟くん。怨むなら、荒川の舎弟になったことを怨むんだね。不良と関わったばかりに、君は酷い目に遭う」

「俺は荒川の舎弟になったことを怨むつもりはない。あいつは俺の大事な相棒だっ…、ヨウを狩る? ふざけるな。他の仲間が黙っちゃいない。あんたはリーダーを狩れない。絶対に」


「面白いね」やってみようか、相手の台詞が俺の鼓膜を打った。

ダンボールから下りた里見の右靴底が腹部を圧迫してくる。

相手の体重に重みを感じながら、俺は鼻を鳴らして断言する。


ヨウは狩れないし、狩られるような馬鹿でもない。

例え舎弟が手中にいてもだ。
俺ひとりであいつを支えていると思うなよ。


俺だけのリーダーじゃないんだぜ、あいつは。


その気丈がいつまで持つか見物だと里見は冷笑し、相棒の間宮を呼ぶと、扉に爪先を向ける。

「ゲームをしようか」

里見は首を捻って視線を投げかけてきた。
 
 
「君はぼく等に狩られた。じゃあ荒川達は異変に気付き、君を助け出せるかな。十中八九、気付けないだろうけどね。一週間は気付かない、ぼくは断言しておく」

 
そうそう狩られた獲物は大人しくしておく、が、基本だぜ?

なあ、荒川の舎弟くん。それに荒川達は気付かないさ、絶対に。


そして気付いた時にはすべて手遅れなんだ、すべて、さ。


くつくつと喉で笑い、里見は間宮と倉庫から出て行く。

入れ替わりに入って来た不良集団に俺は血の気を引いてしまった。

なんだよこの団体様っ、里見の奴、不良狩りが好きなんじゃないのかよ。


なんで不良を倉庫に招いてく、ま…、まさか…、まさかっ、ちょ、フルボッコって経験はあるけどリンチって経験はない。

わけでもないけど、それはナシナシっ、なっ―――…。