「ちゅーから生まれる味か」

美味しいのかな、俺は唸り声を上げた。

「美味しくないのはヤですよね」

ココロが眉を下げる。


如何せん俺達は初心者なもので何もかもが手探りなのですよ。

いや普通に考えて人のべろをちゅーするって色々と考えないか?

口臭面やら衛生面やら。

エチケットとして歯磨きはするべきなのだろうかとか、いろーいろと考えてしまう。


分からん、どうすればいいんだ。


なんとなく失敗はしたくないから、同じ味にしようと話を纏めた。

二人して青りんごの飴玉を手に取ると、それを口に放って舐め舐めごろごろ。

暫くして飴玉がなくなったことを確認し、再度トライ!


と、思ったんだけど俺達はまたもや尻込みしてしまう。


「同じ味で良かったんでしょうか。ケイさん。べろちゅーってその、あ、あ、相手のべろをた、楽しむものですよね!」

「やっぱ別々の味にするべきなのかな。てか、飴玉に染み付いた舌を味わうためのキスなのか? これ」


「えーっと…、どうなんでしょう。弥生ちゃんは口臭を気にするならーって、飴玉の知恵を教えてくれたんですけど。
あ、じゃあメロンとソーダなんてどうです?
だってほら、合わせたらメロンソーダになるじゃないですか、それかいっそのこと、ひとつの飴を舐めあっちゃうとか!」


「おぉおっ、なるほど。それだったら味を楽しめているし、目的も達成……え゛?」

「え? ……、うっわぁああああ! 私、なんってことをっ、うっわぁあああああ!」


大パニックになるココロと狼狽する俺。

一頻り騒いだ後、俺達は赤面しながら散らばった飴玉達を見つめた。


「む、ムズカシイな」


やっぱり突然やるのは無理なんだと俺は改めさせられ、「段階が必要ですね」ココロが小さく呻く。

そう、いきなりべろちゅーなんて高度な行為、俺達には無理なのである。

ジッミーに生きてきた男女が日向男女と同じような行為をしろなんて無茶苦茶だ。
 

チラ、チラ、視線をかち合わせた俺達は今しばらく沈黙を作る。このまま何もないのはヘタレ。

だけど高度な行為は無理。でもなんかしたい。


その気持ちが交差しては沈黙、交差しては沈黙、交差しては「今は普通にキスじゃ駄目?」


俺は沈黙を裂くように口を開いた。


同調するココロはうんっと綻んでくる。

結論付けることにした。
周囲がどうであろうと俺達は俺達のペースでいきたい―――…。