不安がこみ上げてきて、ついヨウに意見を求める。

能天気に頭の後ろで腕を組むヨウは吹いていた口笛を止めて、

「ビビッてもしゃーないだろ」

来る時は全力でぶつかるまでだと肩を竦める。

でも相手は曲がりくねった戦法で攻めてくる輩。

真っ向から勝負を挑んでくるわけないだろうし。

唸り声を漏らしながら俺はリーダーに何か対策を打っておかないかと提案するものの、得体の知れない相手じゃ対策を打つも何もないんじゃないかと返された。


そりゃそうだけど…、俺は怖いんだよ。自分が利用されるのも、また彼女が人質になるのも、友達が危険な目に遭うのも。

俺の不安を払拭するようにヨウが一笑してきた。


「心配すんなって。変な動きがありゃすぐ対策を打つから。ストーカーが出たら、逆にそいつをストーカーし返すくれぇの意気込みだぜ。俺」


あんま頼もしくない発言。ストーカーし返すとか怖いんだけど。

ハジメと俺は顔を見合わせ、ちょっち苦笑い。

ヨウの心遣いは分かったから、その台詞、甘んじて受け止めておくことにしよう。


そうだよな。

ヨウの言うとおり、なにかあるんじゃないかって毎日にビビッていてもどうしょうもない。

俺の不安は毎日“今日もしかして交通事故にでも遭うんじゃないか”って不安を抱くのと同じだよな。過度に不安を抱くのはよそう。
 


気持ちを切り替えてたむろ場に戻る。

すると頃合を見計らったかのように、倉庫いっぱい響き渡る俺とハジメの名前。

びっくらこく俺達に対し、何処に行っていたのだと声の主はズンズンと詰め寄ってきた。


犯人はハジメと喧嘩なうしている弥生。


ジーッと俺とハジメを見据え、帰りが遅いから探しに行こうと思ったなんてお小言を頂戴してしまう。

あっれ、お前、今日は響子さんやココロと茶会するんじゃなかったか?

ハジメと一緒にいたくないからって、喫茶店にいった筈なのに、なーんで戻って来ているんだよ。

しかも俺までお小言を貰う意味が分からない。ハジメは分かるけど、なんで俺まで。


何か用があるならメールしてくれりゃいいじゃんかよ。


疑問符を頭上に浮かべる俺と、やや呆れ気味のハジメ、お小言を漏らしている弥生は俺達の態度に顔を凄んでくる。


で、開口一番に言うんだ。


「ハジメ。ケイ。デートするよ」と。


……はい?
 
待て待て待て、それこそなんで俺まで名指しされるんだい? お嬢さん。

弥生とハジメは分かる、だってカレカノだし。

じゃあ俺はなんだい?
お前等のデート光景をその都度レポーターすればいいのかい?


……冗談じゃね!