「女の子は恋愛を重視するけど、男の子は違うのかもね。
前に雑誌で読んだけど、男女の恋愛観は違うんだって。
絶対にありえないと思うけど、男の子は別れた女子と普通にキスできると思っているらしいよ」

「キスの意味合いも、男女間じゃちげぇとうちは思うぜ?
これも雑誌で読んだんだが、男の場合は戯れ。女の場合は愛だと捉えることが多いそうだ」


「ゲッ。ありえない」眉根を潜める弥生に、「言ったろ?」価値観が違うんだって、響子は肩を竦める。
 

「感受性の違いってヤツだな。女の方が感受性が強い。その分、受け取り方も重いんだよ。
まあ、これはあくまで一般論。
自分達の恋愛と当てはまるとは限らないと思うぜ。

あんた等、彼氏には大事にされているだろ?」
 

うんっと頷くココロ。

吐息をつく弥生は大事にされ過ぎってのもねぇ…、と肩を落とす。


「少しは強引があってもいいと思うんだよ。
そりゃいきなり、押し倒しとかされたら怖いけど…、少女漫画チックな展開を期待したっていいじゃんか。ハジメのヘタレ」
 
「漫画だから許されるってところもあるだろうよ。
リアルはリアル、自分の恋愛を頑張んな。ハジメって学校じゃどうなんだ? モテ男か?」


響子の問い掛けに、むすくれる弥生は意識する女の子は多少なりともいるだろうと分析しているらしい。

「だってハジメ!」

基本的に誰にでも優しいもん、しょうがないんだもん、勘違いしちゃうもん。

あれがいいところではあるんだろうけど、ぶーっと膨れ面を作る弥生。

若干ノロケが入っていたりいなかったりだ。
 

ココロは他校生のため彼氏の姿を想像してみるしかない。

彼氏曰く、「クラスメートから結構距離を置かれている」らしい。

荒川の舎弟だからだろう。彼の良い噂はまったく耳にしないため、皆それを鵜呑みにしているのだと思われる。

ちょっと安心かもしれない。
だって距離を置かれているということは女子も寄りつかないということ。

彼氏を悪く思って欲しくはないけれど、でも、あんまり興味を持って欲しくないというのも事実。これは彼女としての我が儘だ。
 

チームや友達のために喧嘩している姿を見られたら、女子だって放っておかないだろう。あの姿は自分が知っているだけでいい。

そう、ちょっとキスを仕掛けてくる姿も、抱擁してくるぬくもりも、照れた顔も。


ココロは脳裏に姿を思い浮かべ、えへっと笑みを浮かべる。うん、やっぱり知っておくのは自分だけでいい。