「はよっス! ケイさん!」


朝から会えてチョー嬉しいっス!

ニッコニコと笑顔を振り撒く後輩であり弟分のキヨタの制服は、俺と同じ制服。緋色のブレザーに、カッターシャツ、ネクタイ…、中坊の風格はまるでない。


ピッカピカの一年生オーラを振り撒いた新入生だ。


んー、俺的にはまだ中坊のキヨタが頭にあるから、違和感があるんだけどな。
 

満遍なくキヨタを見て、思わず一笑。


早速制服を着崩してるな、こいつ。

髪の色だけは俺とオソロにするために黒を貫き通してるけど、耳にはボールピアスが素敵にバッチシ決められちゃって。

最初っからそんなことしてると教師に目をつけられるってのに。
 

パッと見は地味、目を凝らして見ると不良くん、まさしく地味不良くんだよな、キヨタは。


ブンブンブンブン見えない尾を振ってくるキヨタの構ってモードにやや押されつつ、

「なんでこんなところに?」

今日もオリエンテーションなんだろ? と質問。移動教室だろうに、こんなところでのんびりしてても良いのか?

そしたらキヨタ、むーっと脹れ面を作った。
 

「俺っち、職員室に呼び出されたんっスよ。服装のことで……、何処にいっても先公は煩いっスね。服装を正せだの、ピアスは外せだの。
お小言に煩いなーって思ってたら、ケイさん見つけて、なんか超カッケーことしてるの見たから追い駆けて来たんっス! 先公の前でプリントっぽいの破ってたケイさんカッケかったス! 担任ぽかったスけど、喧嘩でもしてたんっスか?」


「あー…喧嘩っつーか、うん、まあ、喧嘩を売ったに近いかも。はぁ…参ったな」
 
 
溜息混じりにポリポリと頭部を掻いた俺だったけど、ふと煩い子犬その1がいないことに気付く。

大抵キヨタが現れたら、ヨウ信者改めモトがギャンギャンワンワン吠えながら俺に悪態をついてくるんだけど…、いないみたいだな。

なんか変な感じ、静か過ぎて君が悪い。


「モトは?」一緒じゃないのか? 俺の問い掛けに、「あり?」言ってませんでしたっけ? モトは首を傾げて答を返した。