「死にそうだ」俺の嘆きに、『おれはもっと死にそうだ』健太の泣き笑いが聞こえてくる。

なんだよ自分が言ったくせに、言ったくせに。


「もう、大丈夫だな。お前」

『ああ。ストーカーの一件も、チームに手を貸してどうにか乗り切るさ。今しばらくはトラウマになりそうだけど頑張るよ』


そっか、お前なら大丈夫だよ。乗り切れる。

もしまた何か遭ったら、約束に基づいて行動させてもらうさ。

わりと有言実行する男だよ俺。
たまーにしない時もあるけどさ。
 

『あ、やっべぇ』

アキラさんが戻って来そうだと健太が言うから、

「またな」

俺は今度奢ってくれとおどけて別れの挨拶を交わす。


携帯を切った俺は部屋に戻れる気にならず、頭の後ろで腕を組み、今しばらく暇を弄ばせる。

あーあー、どうしてくれるんだろうね。

部屋に戻れないじゃないか。こんな面じゃ。


「俺が馬鹿みたいに真っ直ぐなのは」


健太の言うとおり、舎兄の影響かもしれない。

俺は泣き笑いのまま、襖の向こうに向かって肩を竦めた。
   
 
「ヨーウ。お前の真っ直ぐ馬鹿が感染ったんだけど。苦情出していい?」
 
「じゃあ俺も苦情を出す。テメェの馬鹿調子ノリが感染った。どうしてくれやがる」