青騒のフォトグラフ Vol.2 ―夜嵐の不良狩り―



でも途中、背後にいた輩に気付かなくて…、襲われて…、気付いたら知らない場所にいて。

視界はちっとも利かないし、手探りで扉を見つけても開かないし、俺の手に持つ携帯の受信ボックスには『迎えに来たよ』って変なメールは届くし。

もう大パニックだ。
体は超痛いし。


親に連絡しようとも思ったんだけど、奇怪なメールはどんどん届くんだ。


これを親に言えばどうなるか、勇者になれるならやってみればいいって。これ以上のことが起きるだろうからって。

最初こそ負けてやるもんかとか思ったんだけど、家族の添付画像が送られてきて頼れないって思った。

どうすればいいか分からない。どうすればおれは此処から抜けられるんだろう。


リアルな脱出ゲームにおれ、ほんっとパニクって。怖くて。どうしようもなくって。


『圭太っ…、おれ、どこにいるんだろう。このままっ…、なのかな。警察に連絡するにもストーカーのやることなすことが怖くて』


家族には迷惑を掛けられないし。

涙声で説明してくる健太に、「大丈夫だって」三時間内で決着をつけると言ったお前のリーダーを信じろよ、俺は努めて相手を落ち着かせることに専念する。


「何か手掛かりはないのか?」


居場所が特定できそうなものはないか。
なんでもいい、何か小さな情報でも提供してもらいたい。

俺の申し出に、『情報つったって』窓なんてないし、健太は困惑した声を漏らす。移動しているんだろう。砂粒をすり潰すような足音が聞こえた。


『んー。此処、狭いみたい。おれの感覚だけど。あ…、そういえばおれ、大声出して助けを求めたりしたんだけど…、声、届かなかったみたいだ。
シカトされたのかもしんねぇけど、もしシカトされてねぇんだったら、周囲に民家とかないのかも』


狭い空間、民家がないかもしれない、それだけじゃ情報が足りなさ過ぎる。

もっと何かないのか、催促するんだけど健太は困ったように呻くだけ。

ついでに腹減ってきたと生理的欲求も口にした。


少し気持ちが落ち着いてきたんだろう。

空腹を感じるって、つまりそういうことだ。


『あ、なんか聞こえてくる』


なんだろう、今まで気付かなかったけど…、カンカンカン、踏切みたいな音が聞こえる。
 

「踏切の音が聞こえる、健太はそう言っています」


日賀野に言うと、「アズミ。踏切だ」リーダーはチームの頭脳派に呼び掛ける。

「はいな。ちょっと待って」

返事し、カウンターでノートパソコンを起動させていた。

んでもって、「荒川の舎弟」ちょっと来てとキーボードを弾きながらアズミは俺を呼んでくる。

携帯を日賀野に手渡し、引き続き健太から情報提供を促すよう頼むと、急いでアズミの下に向かった。