「例えばだ。一連の事件が無差別に不良達を狙っているとしたら、ケンがその事件に巻き込まれた可能性がある。あいつはこのチームに身を置いているからな」
「健太を使ってチームを脅かす。手ぐすねを引いている輩が目論む可能性がある、と言いたいんですね?」
「妥当な意見だと思わないか?」
日賀野のクエッションに、
「健太は手腕がないですからね」
弱者を使ってチームを脅かす戦法は喧嘩において基本戦術になる。
可能性は大です、と意見を返す。
健太にとっては厳しい意見だろうけど、弱者の利用は幾多に渡って行われたてきたこと。
五十嵐戦でココロや帆奈美さんが人質に取られたのも根底に弱者という観念があったからだ。
「ケンは確かに弱い」
その点、手先の器用さでチームの糧になっている。日賀野は意味深に息をつく。
「個性パーソンが」
狙われている可能性も大じゃないですか、俺はリーダーに更なる意見を重ねた。
「手腕以外の長けたものを持つ。それはチームの強みになりますが、同時に他者にとっては脅威になります。
健太の手先の器用さを真似しろと言っても、なかなか真似はできませんし。チームがそれを失うのも痛手ですよ」
「荒川の舎弟だと思えねぇほど的確な意見だ。ご尤もだな。
はぁあ…、プレインボーイ、なんで荒川の舎弟してやがるんだよ。阿呆の舎弟なんざ勿体ねぇぞ。
あいつなら、『取り敢えず行動してみっか!』でちっとも考えようとしねぇ。途中で考えることを放棄しやがるっつーのに。俺の舎弟になったら上手く使ってやるのにな」
は、ははっ、反論できねぇ。
確かにヨウは途中考えることを放棄することがあるんだよな。
いやでも、ずいぶん改善はされたと思うんだ!
相変わらず直球でおばかなところはあるけど、あいつはあいつなりに頑張っているよ!
うん、頑張っているよ。
「俺も足が欲しいぜ」
そしたら移動手段が楽だよな、と愚痴る日賀野。
お前も楽したい輩か!
どいつもこいつも俺をタクシー代わりにしやがってからにもう!
「とにかくケンを捜すしかないじゃんか。ヤマト」
事情を聞いたホシが即行するべきだと言うけど、「いや」無闇に捜しても時間の無駄だと日賀野。
「プレインボーイも」
そう判断してこっちに赴いたんだろう、と頭の回転が速いリーダーは聞いてくる。
俺は頷き、「あいつはおかしかった」だから此処で情報を仕入れようと思ったのだと肩を落とす。
直行で家に行ってもよかったけど、それよか身近にいるチームに赴いた方が何かと都合がいいしな。
健太のことを助けて欲しかったってのもある。
あくまで健太は日賀野チームの一員。
あいつ自身も荒川チームに世話になるよかは、自分のチームで世話になった方がいいだろう。



