「あいつには何度もチームに相談するように言ったんですけど…」
その様子からして健太は俺と会った日を最後に誰にも悩みを打ち明けていないよう。
吐息をつく俺の隣を陣取るススムが一ミリも笑わず、「ケンが…」赤髪を掻いて日賀野に視線を流した。
足を組んで顎に指を絡める日賀野は、やや間を置いて口を動かす。
「最近。不可解に不良達が甚振られているという話を聞いたことがあるんだが」
「甚振られている?」
聞き返す俺に首肯する日賀野は、「ただの喧嘩でヤラれるんじゃねえ」まるで誰かに甚振られたような味の悪い喧嘩が多発しているのだと教えてくれた。
聞くどの話も不可解なヤラれ方。
姑息な手を使う自分達が言えたことではないが、それはそれは姑息な手を使われたような、目を瞠るヤラれ方をしているのだとか。
「貴様のチーム」
先日、真杉と喧嘩したと聞いているが…、詳細を話せと目で訴えられたから俺は語り部に立つことにする。
「正式には真杉の取り巻きとの喧嘩です。チームメートがたまたま…、いやスリという巧妙な手口で真杉のたむろ場に誘い込まれ、そして濡れ衣を着せられた」
ハジメが調べてくれた情報によると主犯は嘉藤基樹。
人望に厚い真杉を目の敵にして襲ったとデマを流されたようです。
勿論、モトはそんな奴じゃありませんし、ヨウ自身もそれを聞いて憤慨していました。
真杉の取り巻きとの一件は真杉とヨウの話し合いによって、取り敢えず事を治めていますが一件の事件により、荒川チームは真杉の取り巻きとの仲が芳しくないです。
ちなみに真杉達を襲った本当の犯人は不明。
証言によると、突然襲われたそうなのです。手がかりもまったくなくって。
俺達が喧嘩をしている間、別行動を起こしていたハジメが必死に濡れ衣を晴らそうと間接的な情報仲間と一緒に奔走してくれたんですが、結果は謂わずもですね。
ヨウはこの事件を気掛かりにしています。
が、打つ手なしなので現在保留という形を取っているところです。
「以上が荒川チームの遭遇した真杉との喧嘩ですが」
「また不可解な喧嘩をしたもんだな。チッ、気に食わねぇな。どうも裏で手ぐすねを引いている輩がいるようだ」
噂に聞く不可解なヤラれ方をしている不良達と関連性があるのかもしれない。
舌を鳴らす日賀野に俺も眉根を寄せる。
そういえばモトの奴、逃げている際、階段に落ちたってヨウに話していたけど…、その時、ポツリと独り言を漏らしていたんだよな。
「オレを落としたあいつは取り巻きじゃないのか」って。
モトの奴、ヨウには話す程度のものじゃないって黙っているみたいだけど。



