「い、いじめヨクナイです!」
思い切って反論してみると、
「可愛がってるんだが?」
思い切り悪意ある笑みを向けられ、腕で首を絞められる。
ギ、ギブギブ!
ヤだもう、この人。
俺は泣きたい! 帰りたい! 誰かに助けを求めたい!
間違った可愛がりを受けている俺を流し目にしていたホシが、「それでさ」結局何の用? やんわり助け舟を出してくれた。
本当に舎弟になりに来たなら歓迎するけど、「チームの糧になるしね」皮肉を込めてくれるホシ。
俺達の様子にくつくつと笑っているススムは、また荒川チームと対峙しそうだとその笑いを噛み殺している。
我に返った俺は日賀野の腕から脱して、携帯を握り締めながら健太の行方をリーダーに尋ねた。
「ケン?」
一変して訝しげな面持ちを作る日賀野は、ここ三日たむろ場に来ていないと答えた。
便乗してくる魚住も、「学校にも来とらんぞい」と肩を竦めてくる。
メールをしても返事が来ないそうな。
魚住はあまり気にはしていないようだけど、その事実を聞いた瞬間、俺は持っていた携帯を開いて健太の自宅番号を呼び出す。
一体なんだと怪訝な眼が飛んでくるけど、俺は構うことなく健太の自宅に電話し、家にいたおばちゃんと会話。
そして静かに電話を切ると、息を詰めて身を震わせた。
「健太…、昨日から家に帰っていない。じゃああいつ、何処から電話してっ」
「プレインボーイ。ソファーに座れ。事情を聴く」
さすがは頭脳派不良、俺の様子で何かあると察したのだろう。
踵返すと早足でソファーに戻り、トランプをしているホシ達に目で片付けろと指示。
手早く片付けを始める動作を横目で見ながら、俺は駆け足でソファーに向かう。
その間の時間も惜しくて、俺は早々に話題を切り出した。
健太がおかしいのだと。
それこそ健太が二週間ほど前から悩まされていたストーカーの話。
三日前の出来事と合わせた手紙の話。
最後に俺に掛かってきた電話の話。
包み隠さずリーダーに説明する。
「ストーカー?」
眉を寄せる日賀野は、初耳だと言わんばかりにしかめっ面を作る。
そりゃそうだ。健太、チームには黙っていたんだし。
どうしてもチームに一個人の問題を持ち込みたくない。
でも抱え込んでいるのも辛い。
だから俺に悩みを打ち明けてきた。
その旨をしっかり話しておく。



