「ヤーマト。客人じゃぞい。おもろい客人じゃぞい」
「あー? おもろい?」
誰だと視線を流してきた青メッシュ不良と視線がかち合う。
途端に俺の本能は大絶叫。「お邪魔しましたぁあああ!」トラウマ魂という名の悲鳴を上げてBダッシュ。
「おーっとなんで逃げんるじゃい」
魚住が首根っこを掴んできた。ゲッ、何してくれちゃってるの!
此処は駄目だ駄目だ駄目だなんだよっ、やっぱあの人は俺のトラう「プレインボーイじゃねえか!」
ギャァアア、ジャイアン超嬉しそうだよ!
こっち来たしっ、ちょぉおっ、放して!
魚住その手を放してくれぇえ!
じたばたしている俺の首根っこを掴んでいる魚住は、ものすっごいあくどい顔を作るとそのまま店内に俺の身を投げる。
おっとっと。
バランスを崩してよろめく俺だったけど、次の瞬間ガッチンと硬直。
め、目の前に俺のトラウマ、トラウマ不良がっ、ウワァアア!
ヘルプっ、ヨウヘルプっ!
こいつに何の呪文を掛ければ、恐怖心が拭えたんでしたっけっ!
犬…、犬ぶっころしゅんだっけ!?
兄貴、アーニキ!
大パニックを起こす俺を余所に、「よっ」久しぶりじゃねえか、ニヤニヤリニタリと笑う青メッシュ不良はわざわざ会いに来てくれるなんて嬉しいぜ、と声を掛けてくれる。
が、俺はちっとも嬉しくない。
これっぽっちも嬉しくない。
寧ろ悲しみの涙が出そうなんだぜ!
好き好んで会いに来たんじゃねえぞど阿呆。
「えへへっ」遠慮がちに笑うと、後ずさりしながら出直してきますとヘタレモードを惜しみなく発動。
「ナンセンスだろ」
もう帰っちまうのか?
俺に会いに来たんだろ?
右肩に腕を置いて逃げ道を塞いできた。
ち、ち、ちっけぇー!
至近距離だよおいっ、ジャイアン日賀野とこの距離っ、マジナンセンス!
今日は舎兄がいねぇんだな、素朴な疑問に俺はお一人様で来ましたとぎこちなく返事。
なるほど、ということはやっと俺の舎弟になりに来たのか。
日賀野がニッタァと視線を送ってくる。こ、この人の辞書に諦めという文字はないのだろうか!
俺は日賀野の舎弟になんてならないゆーとるのに!
散々ゆーとるのに!
「大体、プレインボーイがさっさと落ちないから俺はあのクソバカに負けてるんだぞ。あ゛ーん?」
この俺が思い通りにならないなんてなかったんだ。責任とって貰わないとな。
非常に傲慢な発言を零しながら、日賀野は俺の耳を引っ張ってくる。
イデデッ、そ、そんなこと言われてもっ、落ちるわけないじゃないですかっ!
あんなにフルボッコしてくれてたんだからっ!



