よーし決まりだな。
んじゃ早速チャリを取ってくるか。


俺達は駐輪場に向かう。


すれ違い様、二次会に行く面子とすれ違った。

その中に睨みをきかしてくる女子がいたけど受け流す。

ずいぶん俺も嫌われたもんだよな。

俺が何したって言うんだよ。


フンと不機嫌に鼻を鳴らす俺に苦笑いを零す健太は、「お前もよくやるよ」と呆れ気味に感心してくる。

だから向こうが喧嘩売ってくるんだって。

ぶすくれながらチャリの鍵を出す俺だったけど、チャリのカゴの微妙な変化に気付いて動作を止める。


カゴの中に紙くずが入ってらぁ。

なんだよ、此処に来た時は入ってなかったんだけど。


「俺のチャリは屑篭か! ったく、なんだよこれ」

「はは乙っ、出会い系関連のチラシでも入れられたのか?」

「だったら間に合ってるって」

俺は丸められている紙くずを取って何気なく中身を開いた。
 
 

【楽シイ時間もソロソロ終ワリ。必ズ迎エに行キマス】



グシャッ―。
 

俺は大慌てでそれを丸めた。

健太、見てないよな。見ちゃないよな。見ちゃ「お、おわり…?」


お、遅かったか。


血の気を引かせる健太は顔面蒼白で俺を見つめてくる。

そんな捨てられた子犬のような顔…とも言いがたいけど、鳩が豆鉄砲食らったような表情を俺に突きつけられても困るって健太。

俺だって怖いよ。
わざわざ俺のチャリのカゴに入っていたんだし。


「く、くる。きっとくる」


どっかで聞いたことあるホラー映画のフレーズを歌った健太は、なんだよもうぉおおおお! と叫んでその場にしゃがんでしまう。


「ナニコレめっちゃ怖い! おれが今日外出しているの知っていてっ、で、圭太のチャリを的確にチョイスし、メッセージを入れる。
どっかでおれのことを見ていたしかねぇえじゃんかぁああ! うわぁああああ殺される! おれは井戸の向こうにいる女性から殺されるっ! テレビから出てくる長髪の女性に殺されるんだぁあ! さーだーこーごーめーん! でもでもビデオは見てないのにぃい!」


「け、健太落ち着け! お前、すっかりホラー映画の主人公になりきってるぞ!」

「落ち着けるかよぉおお! ぎゃぁあああ殺される!」